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海を歩く神経に塗り替わる皮膚

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2011年

[] フォンテヌブロー城

バスの行き先は "Chateau" だった。スペイン系の顔立ちの、旅行者に見える女性が降りたので私も降りた。彼女が地元のひとらしい男性になにかを訊くと、彼はまっすぐ行って左だと答えた。彼女はそれからどこかの道に入っていってしまったので、私はまっすぐ歩いてみた。

左側に金の鷲の乗っかった門が出てきて、広すぎる庭の向こうにお屋敷があった。フォンテーヌブローの森、と思いながら茫然とお屋敷を眺めていたら、さっきの女性が私を追い越して門をくぐっていったので私もなかに入った。

見事な王宮だった。色づかいも様式も趣味もさまざまの、豪華な部屋がいくつもあった。

大広間ではきっと家来や来賓がかしこまってしずしずと歩いたに違いない。シャンデリアがこんなにもいろいろな種類があって、つくりや材質によってこんなにも違った表情と趣を持つモノだとは知らなかった。

さぞかし時間とお金がかかっただろうと思われる天井画がいくつもの部屋に誂えてあった。凝ったつくりのドアノブもいくつものドアに付いていた。ドア自体にも彫刻がくっついていたり、それが造られた年が飾り文字で彫り込まれていたり、趣向の凝らされていないところなどないのではないかと思うほど。見応えたっぷり。

とくに気を惹かれて長い時間が過ぎたのが舞踏の間。ひとつひとつの華やかな絵画と、明るく華やいだシャンデリアと、出迎える主宰者に挨拶をする間の囲いと、そしてなにより木をいかした天井の彫刻的な模様と色づかい。落ち着きのあるなかに舞踏の間らしい華やかさがあって、謁見の間や寝室よりもこここそが王宮のハイライトなのではないかと思わされた。

舞踏の間を出たところにも天上の世界のようなマニエリスムの彫刻があって、ディオニュソスもさぞやと思わずにはいられない。女王の間、というのだろうか、The Diana Gallery という長い廊下室のような空間もまた豪華で、手にした瞬間に重さと湿り気を感じそうな古い本が壁面の本棚にびっしりしまわれていた。

たくさんの王や女王の部屋があって、なかでもマリー・アントワネットの部屋は趣味がよくて、そのことがすこし意外だった。調度品も派手というより繊細で美しいかたちの、あるいは材質のよいものが多くて、部屋にしっくりとおさまりながらアクセントともなっていて統一感があって気に入った。

美しく派手すぎないタペストリーに、ぜんぜん違うのになぜか賓日館を思い出した。階段室もまた、手すりの彫りとランタンがとてもよかった。

長持ちしそうな糸づかい。

驚いたことに、お城のなかに教会が。マリアも。

庭の向こうに森が。歩くことはできなかったけれど私はずいぶん満腹になっていた。

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